ナレッジセンターサービス(KCS)
〜新しいナレッジの考え方〜


本ページでは、ナレッジマネジメントの国際標準フレームワークである「KCS」について解説します。

KCSにおける4つの前提条件 

ナレッジの棚卸はしてはいけない?

サポートセンターにはスタッフが利用するナレッジと、顧客が利用するFAQは、その鮮度を維持し、利用率を高めるため棚卸をしてコンテンツを見直し、品質向上に努めます。・・・と私も思っていましたし、実際にセンターで実行していました。しかし見直しには多大な労力と時間がかかり、アップデートした時にはまた時代遅れになるなど、なかなか利用されません。そんな時、米国でKCSのトレーニングを受講し、ナレッジの棚卸は時間と労力の無駄ですべきではないと教わりました。なぜかというと顧客対応のナレッジは、いわば顧客からの要求に応えるソリューションで、顧客の状況が変化する中では、ソリューションにも変化が求められ、結果として完成形はないので見直しても無駄だからです。

ナレッジは知識の倉庫ではない?

ナレッジは商品やサービスの開発者や専門家が作成し、それをセンターや顧客が利用するものと思っていました。しかしセンターで顧客対応の過程でナレッジがうまく利用できないのは、顧客の問合せる内容や表現が、専門家が記載したナレッジ記述との間にギャップがあり、検索してもヒットしないことがあります。またこの従来のナレッジには製品やサービスについて企業が持っている知識が記載されていますが、サポートスタッフの経験値や顧客の問合せ時の状況は含まれていないので、ソリューションとしては利用価値が低いこともあります。

知っていることは何かを知るために検索する

スタッフが知らないことを検索するためにナレッジを利用する、という考え方は正しいでしょうか。顧客から問合せを受けて、まずスタッフが自身の経験や知識で対応をしますが、人は瞬間的に浮かぶ知恵やソリューションは、本来知っていることの20%程度しかありません(HDI調べ)。そこでナレッジを検索すると、「こんな方法もあった」「この処理はさらに有効だ」と気づかされます。つまりナレッジは知らないことを知るために利用する以上に、知っていることは何かを知るために利用するのです。したがって問合せ対応時に、対応策がすぐに頭に浮かんでも、もっと良い方法があるのではと必ずナレッジを検索することが求められます。

問合せが同じでも対応策は異なる?

ナレッジコンテンツには、この問合せにはこの解決策をと、1対1で紐づけがちです。しかし顧客が問題に直面して問合せをするときには、その問題発生の状況や環境は様々です。したがって顧客に提供する対応策やソリューションも顧客の状況に合わせて異なってくるわけです。ソリューションナレッジには顧客の状況を含めて記載し、顧客に合った有効な対応策が提供できるよう、同じ問合せでも複数の解決策がある1対Nの考え方で作成しなければなりません。また顧客は現状の問題の回避策や対応策がほしいのであって、その問題が発生した根本原因の問題解決策がほしいわけではないことが非常に多いので、根本原因解決策を記載しようと時間をかけて調べることは効果的ではありません。




KCS(ナレッジ・センター・サービス)とは

KCSはナレッジがうまく活用できないと悩む多くのIT企業などが、多額の投資をして米国のNPO団体「サービスイノベーションコンソーシアム」が10年を要して実証実験を繰り返し完成した、企業の主要な資産であるナレッジに注目した一連の実践プロセスと方法論です。
従来の知識データベースがなぜサポートセンターで機能しないのか、それはソリューションデータベースになっていなかったからです。専門家や開発者が作成する知識データベースは、いわばマニュアルや規定書のようなもので、正しいことを普遍的に記載します。一方顧客対応で利用するサポートセンターのソリューションデータベースは、刻々と変化する状況に合わせてその時点の最善の策を提供するもので、完成形はなく常に変化を続けるものです。KCSは、このソリューションデータベースの利用方法、管理方法、価値、導入の方法、利用者の教育、ツールの必要条件、プロセス統合の要件などを取りまとめたものです。

センターは重複業務の繰り返し

サポートセンタースタッフが問合せを受け、対応策が浮かんでこないとナレッジを検索します。しかしそのセンターにとって初めての問合せ内容はナレッジには存在しません。そこでスタッフはマニュアルを見たり、文献を探したり、他のスタッフに聞いたり、またインターネットを調べたりして、何らかのソリューションを発見します。そして顧客と話しながら、顧客の状況に対応できるかを顧客とともに確認しながら、解決できるか進め、そしてうまくいったとき顧客対応を終了することができます。そしてこのスタッフは対応を記録に残し次の問合せに進みます。この初めての問合せと同様な内容のものは、次々に入ってくるようになります。その都度各スタッフは対応を開始しますが、最初に受けたスタッフと同様ナレッジには記載がないので、調査や検討に時間をかけます。この作業は次々と届く同様な問合せについて異なるスタッフが同じような調査検討を行います。つまりサポートセンターは重複業務の繰り返しとなっているのです。

従来型ナレッジは投資対効果が低い

同様な問合せを受けているスタッフはナレッジ記述を発見できないので、ナレッジ担当者にコンテンツを作成するように頼みます。ナレッジ担当者はこの問合せを分析し、正しい対応策を発見して、検証作業をし、そしてナレッジコンテンツに追加します。しかし一般に同様な問合せは、最初に届いた時から次第に数が増え、ピークを迎えると次第に減少し、数週間〜数カ月でほぼ沈静する傾向を示します。問合せ数が多くなるとナレッジ担当者もその検証に時間がかかります。そしてようやくナレッジをアップできた時、問合せは沈静に向かっていることが多いのです。ナレッジ担当者が問合せを分析し検証してナレッジコンテンツを作成するまでが投資となります。そしてナレッジが利用されることが効果です。しかしコンテンツアップの遅い従来の方法では投資対効果は低いのです。

KCSではサポートスタッフがナレッジ担当者

投資対効果の高いナレッジ活用を行うために、KCSでは問合せを受けたスタッフは、まずナレッジを検索します。そしてナレッジになければ解決策を作成して直ちにナレッジコンテンツとして登録します。したがって同じ問合せ2回目以降は必ずナレッジが存在することになります。そのナレッジを見て次のスタッフは対応しますが、ナレッジをうのみにするのではなく、活用できるか考えます。もし何らかの修正点を発見したら、直ちに修正を加えます。こうした作業を繰り返していくと、まずセンター内の重複作業がなくなります。そしてナレッジは利用とともに改善され品質が高まっていきます。あるレベル(例えば5回見直し後など)に達したコンテンツは、FAQで顧客に向けた公開コンテンツの候補としてもよいでしょう。このKCSの手法はナレッジの投資対効果が非常に高いものになります。

サポートセンターは重複作業ばかり

サービスイノベーションコンソーシアムの調査ではサポートセンターの作業の60〜80%は従来型ナレッジに端を発する重複作業の繰り返しと言われています。つまりこの重複作業がなくなればセンターの生産性は大変改善されることになります。KCSがこれを実現できるのです。KCSでは問合せ対応ごとに、必ずナレッジを検索します。しかも顧客の状況に合わせ何度も検索します。またセンターが知っていること、企業が知っていることを確認するためにも何度も検索します。したがって従来のコール対応作業に比べると、一見作業時間が長くなるように思われます。しかし60〜80%の重複作業の消滅により、検索作業が増えても、圧倒的な生産性改善が見られます。

センタースタッフのモチベーションが向上する

従来型ナレッジのみでは、センタースタッフは重複作業の繰り返し、つまり日々同様な作業の繰り返しとなります。しかしKCSではすべてのスタッフがナレッジ従事者として、クリエイティブな作業を進めることができ、またナレッジの追加、修正の権限も委譲され、頻繁に学習と自己研鑽の機会が得られ、他スタッフの学びにも触発され高いチームワークと共に、従来の電話対応業務とは比較にならない高いモチベーションが維持できます。またKCSではナレッジを作成する、修正するなど、ナレッジに貢献した人ほど、褒賞、表彰の対象としています。これも大きなモチベーション要因となります。

KCSでも誰でもコンテンツを登録でき、修正できるわけではない

KCSの考え方は、常にナレッジを検索し、顧客向けの対応策がない場合には、それを発見作成した人がナレッジコンテンツを作成し、また修正が必要と感じた人が直ちに修正をするジャストインタイムの考え方で、問合せが来るかもしれないので先に準備しておくジャストインケースの考え方ではありません。しかしナレッジコンテンツを記述するには、他の人にも分かり易く作成するため、コンテンツスタンダードを作成し、これに準拠して推進します。したがってこのコンテンツスタンダードを習熟できるまでは、コンテンツの記載や修正はできません。このレベルの人をKCS候補者と呼びます。しかしKCS候補者でも問合せ内容のみの記述や、修正が必要と考えられるコンテンツにフラグを立てることはできます。そしてコンテンツスタンダードに習熟し、KCSコーチの指導に下にコンテンツのモニタリングに基づく指導を受けたのちに、作成、修正の権限を持ちます。このレベルの人をKCS寄稿者と呼び、一人前となります。さらに習熟度が上がると、センター外への公開権をもつKCS公開者となります。そしてこれらの人々を指導するKCSコーチ、ナレッジの品質を監視するナレッジドメインエキスパートを含めて、KCSライセンスモデルを導入します。

トレーニング案内
HDI-JapanではKCSのトレーニングを実施しています。

KCSについて概要・概念の理解から導入方法まで学ぶことができます。
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KCSアワード
KCS導入に取り組み、HDI-Japanの評価基準を満たしたセンターをKCSアワード受賞センターとして認定しています。
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